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南房総の林道三昧

1.コース

浜金谷-竹岡-林道保田見線-原田山林道-林道奥山仲尾沢線-林道小松線-林道山倉線-林道千倉線-林道畑線-館山-浜金谷 116キロ

(ルート)https://ridewithgps.com/routes/30481530

2.実施日:2019年1月29日(火)晴れ

3.実施者:単独

4.日記

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 東京湾の此方、どこまでも住宅ばかりであるが、彼方房総は、森が広がっているところがまだ多い。森と平地(田んぼや畑)の間にある人家は古く広く、いまの季節だと庭木はたわわな実をつけた橙であったりする。僻地の家は、用心のため、犬を飼っているところがあり、しばしば吠えられた。森は、高くないが、広く、林道の木々の間から見える景色を垣間見ると、ずっと向こうまで人跡なく重畳と続いている。林道のアップダウンは適度な加減、露骨な急な坂は少なく、自転車で走るのによく合っている。木々は、杉やヒノキなどの針葉樹林、ときに雑木林だが、今日行って印象的だったところは、山全体が、名は知らぬが、熱帯のマングローブのような白い幹が目立つ単一の樹木に覆われていたことだ。それは、その林の下を通過しているとき部分的にそう感じたものだが、山倉林道や畑林道からの来し方行く末を千倉から見たときにもそう思ったのであった。より北の天津林道を抜けて振り返った山の感じに似ている。秩父あたりの森に見られない特徴で、気候が温暖であることが影響しているのであろう。温暖といえば、三芳あたりでなぜかソテツが随所に植えられているのが面白かった。黄色い菜の花畑もあった。蝶は見なかったが、春の草花の花が見られた。明け方は寒かったが、保田見林道に入るあたりでもう温くなり、最後まで冬手袋をはめなかった。竹林は、千倉林道のメダケが印象的だが、同じような佇まいがところどころに見られた。マダケの林の中を通ることも多かった。そのとき、しばしば、「カンッ」という乾いた音が林の奥から聞こえてきたが、風で揺れた竹どうしがぶつかる音か、それとも竹が成長するときに出す音なのか。また、今日は、大きなため池の横を通ることが何度かあった。子どものころ住んでいたところにも、これほど大きくはないがため池がよくあって、日陰の水場ではがまが低い声で啼いていたり、鮒やアメリカザリガニ釣りをしたことを思い出した。こういう場所は、いまは埋められて新興住宅地になっているか、残ってもフェンスに厳しく囲まれて子どもたちが立ち入ることができなくなっている。古いものと新しいものの競合は、畑において、集落のなかを新しい道路が縦断したため、従来利用されていただろう畑林道が散乱物で荒れているところに。が、少しずつ掃除している様子も見え、まったく廃道にするつもりはないのだろう。最後に、房総の特徴として隧道をあげることにしたい。1.5車線の林道の隧道のなかは、狭く背も低く、あるところはナトリウム灯で、あるところは白色蛍光灯でぼんやり照らされている。無灯火のそれを含め、ひんやりする冷気と仄かな幽鬼の気配を感じつつ通過したが、行く先の出口の明かりを目指してなかを自転車でゆっくり通ることがなんとなく楽しい。今日はそんな隧道をたぶん10か所以上通過したであろうか。多くのそれは、坂の上にあり、隧道を潜って区切りをつけて、新しいところに向かっていったのである。

 途中で用を足すことで遅刻するのが嫌で、自宅駅始発から乗り継いできたが、寄り道することなく、7時20分の第二便発の凡そ50分前に久里浜港に到着した。徒歩乗船の往復割引切符を求めてから、港入口のコンビニで朝食と行動食のおにぎりを購入した。平日だと、まさか浜金谷に通勤する人もいないだろうと思っていたが、仕事をリタイヤしたらしい、ゴルフバッグを抱えたシニアの人たちが結構いて船内で談笑していた。あるグループは朝っぱらからビールとウイスキーで酒盛りをしている。俺は、温い船内でさっき買った朝食弁当を食べたが、足りないので売店でカレーパンを買った。40分ほどで対岸に到着。ゴルフバッグの人たちは、港の駐車場に待機している各ゴルフ場送迎バスに吸い込まれていった。アイドリングの音が消え潮騒と時折聞こえてくる次便乗船時間のアナウンスを聞きながら、淡々と自転車を組み立てる。8時30分スタート。

 しばらく、湾に沿って、竹岡まで移動したが、国道のトンネルは風の通り道となって通過するのに難儀した。またときどき海からの横風を受けて自転車がふらついた。こんなに風が強くてはこの先が思いやられるなと懸念したが、やがて海辺から離れると、それほどでもなくなった。途中の漁村は牧歌的でほっとする感じだ。寒くなければこういう場所でひねもす海を見ながらのんびりと過ごしたいと思いつつ、先を急ぐ。内陸側の明るい開けた場所を横切り、趣のある集落のなかを通りすぎて、林道保田見線に入る。1.5車線の狭い道は、すぐに地道となり、横に渓流を見ながらうねうね曲がりつつ徐々に高度をあげていったと思えば、いきなり15%ほどの急斜面となった。うんうんいいながら上がると、手彫りの隧道。かつてここに初めて来たときは、路面がとてもぬかるんでいる印象があったが、しばらくの干天のためかそんな感じはなかった。先ほど途中で用(小)を済ましたこともあり、特に長居もせずそのまま通過すると、同じような隧道が何か所か続いたように思う。それらを進んでさらに坂を上がると民家があり、畑には出荷用の水仙が花をつけていた。だが、盗まれぬようまわりに厳しく柵が設けられ、せっかくの撮影ポイントなのにもう少しな感じだ。中学だか高校だか、兼好法師が人里離れた場所に植えられた木の趣に感じ入りつつも、そのまわりを柵で囲ってあるのに気付いて「興冷めだ」とコメントしたとの教科書のエッセイを思い出す。山側に濃い桃色の花をつけているのは河津桜。ここは窪地になって、向こうの山肌にも人家が見える。そこに向けて林道を巻きながら進むとすぐに到着し、さらにたいへん急な坂をつめて尾根を乗り越えて進んだ。同様な地形を再度進んで再び鞍部を越えて窪地を離れると、林道はジェットコースターのようなアップダウンを繰り返しつつ西に進むようになる。途中にある山奥の民家の様子を見つつ、最後、下って車道に合流した。停めて一息つけていると、郵便局員のバイクが林道を上がっていった。

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 長狭街道に合流してから、すぐに妙な名前の横根峠を通過して下りについた。「不動前」のバス停のところで再び山に入る。途中にある水仙畑に足を停めつつ丘をひとつ越えて184号線。高速道路沿いの道の駅に停まって(11時15分)、自販機でホットココアを求めつつ 持参したおにぎりふたつ食べた。

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 原田山林道の標識に従って、再び町を離れた。その先の池畔の岩婦温泉ってどんなどころか楽しみにしてきたが、それらしい温泉宿は見当たらないようだ。林道を抜け、いったん町に出て、次に林道奥山仲尾沢線に入り西に進む。入り端の民家の屋根が立派なのを見て急な坂を上ると、あとはいつものように適度なアップダウンが連続した。道端をよたよたと逃げていくのは、昨年の春多くみかけた貉ではなく日本狸のようだ。ここでもため池に沿って進み、最後南に向けた坂を下って、また開けた場所に入ると、向こうからロードバイクひとり通り過ぎていったので、ぜひ追いついてやろうと頑張ってみたが、ずっと遠くに行ってしまった。途中で道を折れてあぜ道に入り青空の下、気持ちよく自転車を漕いだ。この時間もう風も強くなく、「安房グリーンライン」の一直線の道を南に向けファストランを楽しむ。甘いものが欲しいなと思いながら進むと、内房線の交差点のところに都合よくコンビニエンスがあり、デニッシュパンと飲み物を求めて少し休んだ。

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 内房線の踏切を渡り、引き続き安房グリーンラインを進んだ。道は上り基調だが、まだ太腿の疲労は感じなく、前ミドルで後ろはロー手前にしたまま、快調に坂を上った。ヘリポートへの分岐のある高いところから東の方を望むと、南房総の森が遠くまでずっと続いているのが見える。標高が高くないので、深くはないが、広い森。いったん下って、小松林道に進んだ。途中にある小松寺は、名刹のようだが、先を急ぐため参拝せず道側から伽藍の様子を少し見学した。ここから山の尾根沿いには「大貫古道」という道が通じているとのこと。パスハンターではないので、そのまま林道を進んで坂を詰めると、畑からの尾根筋の道路に合流。車道のトンネルを潜ってから、標識に従って、林道山倉線。

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 この道は、千倉に向けて北東に進んでいくが、細かいカーブとアップ&ダウンが連続して右往左往するから、しばしばどちらを向いているのか方向感覚を失った。この道で特に面白かったのは、林道のまわりを覆っている南国風の木々の雰囲気、葉の生えていない幹の密集している有り様。それら越しにときどききらきら光る太陽の光を訪ねながら自転車を進めた。途中で地道となったが、路面は荒れていないので、ゴムサイドのランドナーだと左程支障もなく楽しめる。しかしそれでも長くダートが続いて、効かないカンチブレーキのレバーを握るのが少し疲れてくるころようやく舗装が復活、どんどん下りだした。ここでも終了はため池。停めてカメラを向けると、驚いた黒い色の水鳥数羽が鳴きながら水面を蹴って遠くに逃げていった。
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 千倉の集落のなかをしばらく進んで、林道千倉線。何度もサイクリングした場所でもうお馴染み。南国らしいジャングルっぽい雰囲気の山道を、渓流に沿って上の電波塔の施設まで上がるが、大した距離でもないことを知っているので、段を落とさずガシガシと進めた。ピークの隧道を越えると、例の味わいのある竹林の道。下ってから、畑に入ったが、竹の柵に天井まで覆われて栽培されている作物は何であろう。動物に食べられるのを避けるためだろうが、四方すべて囲まなくてはいけないのはどうしてなのか。お百姓さんがいたら聞いてみようと思いつつ進んだが、生憎人気はなかったので判らず仕舞。
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 林道畑線は、かなり荒れていた。特に、有名な手掘り隧道の手前あたりは、路上に、土砂や枝、木屑や岩屑が堆積して乗車して進むことは困難である。自転車を持ち上げて何とか徒歩で通過した。潜ると、暗い林の向こうが陽光に光って、すぐ太平洋が近いことを予想させた。ここの道も崖に面しているが、路上の堆積物はところどころ掃除した形跡もある。ハイキング標識もあるので、歩道としての役割は維持するつもりはあるようだ。太陽の明るい光が懐かしく、暗い道を抜け、千倉の花畑と先の太平洋の明るい景観がほっとする。下ってから、この林道を衰退させたであろう車道のトンネルに入り、再び畑に向けて進む。1キロを超えるトンネルはずっと坂上がりだが、きつくはなく、田舎の割には大仰なトンネルの癖に交通量が少ないので、車の轟音におびえることなく楽に通過する。再度、畑を抜け、館山に向けて幹線を逸れて下の集落に下りていった(途中道路工事していて通過できないかと思ったが、ショベルカーを運転している若い工員が親切に通してくれた)。館山のコンビニで少し長く休憩。腹が減ったので、定番のカップラーメンと揚げた鶏を買って、残りおにぎりのおかずにして空腹を満たした。
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 そこからは時間の許す限りできるだけ海岸線を選んで金谷港に向かった。例によって、海岸沿いにある、苦い思い出のつまった学生寮に立ち寄ってみた。遥かむかしの文学部3年の彼女を思い出す。また、子どもが小さいときに尋ねた海岸にも寄ってみたが、そこにあったはずの海の家がなくなっていてちと寂しい。その先もずっと海岸縁の道を選んで進みたかったが、砂溜まりの場所や工事中のところも多く、17時20分発に乗りたいので、途中で国道を進み、金谷港到着17時05分。費用節約のためパッキングして徒歩乗船したいが、15分で収納する自信はなくやむなく自転車料金を払う。

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 自転車乗りは、たぶん俺ひとり。船内でアイスクリームと温かいコーヒーを買って夕暮れなずむ東京湾が赤く染まるのを見ながら、充実したランのあとに覚える心地よい疲労感に浸りつつしばらく寛いだ。朝と同じく、船内ではゴルフ帰りのシニアグループの談笑の声が響く。奥さま方は、机にめいめいのお菓子を広げて、一切の間断なくおしゃべりしている。


Commented by すず at 2019-02-02 15:00 x
こんにちは。相変わらず走っていらっしゃいますね。
畑林道は昨年11月に訪れ、グズグズの泥に阻まれてトンネル手前で断念しました。その後、乾いたようですね。
Commented by paparouh at 2019-02-02 19:09
> すずさん
こんばんは。コメントありがとうございます。畑林道は、年々荒れてきていると感じています。それでも、畑から抜けて、千倉を望む景色が楽しみで、ウィンターシーズンには必ず訪れるようです。今回は、このところ雨が降らなかったために、ぬかるみには合わずに済みました。房総は楽しいですね。機会をとらえてちょくちょく出かけたいなと思っています。
by paparouh | 2019-01-31 22:25 | 千葉県南部 | Comments(2)

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by ぱぱろう
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