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奥と峰と鶴

1.コース

自宅-奥多摩-奥-峰-鶴峠-上野原-大垂水峠-自宅 176キロ

(ルート)https://connect.garmin.com/modern/activity/4929894794

2.実施日:2020年5月14日(木)晴れ

3.実施者:単独

4.日記 

 天野一郎筆「にっぽんの山上集落を訪ねて」白山書房138頁に、“「奥」とは集落名だ。奥多摩湖の北岸、峰谷のまさに奥にある。標高はおよそ920メートル。現在は五世帯が暮らしており、周囲の斜面には民家が数件かたまっている”とある。

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 6時20分自宅発。古里の手前で、ボトルゲージの水筒がないことに気付く。高月の先、秋川の橋を渡るときに、何か落としたような気がして、後ろのサドルバッグを触ってみたが、チャックはしまっており気のせいかと思った。なので、駅前のコンビニで鶴瓶氏の麦茶670mlを購入。

 氷川のコンビニ到着は10時10分過ぎ。自宅から奥多摩まで、俺の脚力だとだいたい4時間かかるようだ。そこでパンを買おうとして、ちょっとしたいざこざに遭遇。そのことにまったく関係なく、奥多摩駅に戻って用足し。

 今日は、「むかし道」に進まなかった。レンタサイクルな彼女もどうせいないし。

 中山トンネルの上にある中山も、その先の水根も、いつか訪れてみたい。トンネルの手前で、クラクションを鳴らされた。

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 閉鎖され、ひっそりとしている小河内ダムを横目に進んだ。女の湯トンネルを潜りつつ、湯に浸かる女人を見てみたいと思う。

 峰谷橋を渡る手前、生れてはじめて右に曲がった。住宅を兼ねた駐在所を過ぎ、「雲風呂」という名前の集落を過ぎ、やがてこれも面白い名前の「下り」に至る。そこのビジターセンターの駐車場もクローズされていたが、構わず中に入って、稼働中の自販機で冷たい飲み物を求めてひと休みした。

 はじめ、「奥」に向かう。峰谷の林道を左に見て、はじめは川沿いをゆるゆると上がって行った。下の民家の庭先で一家総出が何か工作をしている。こちらに勘づいた番犬に吠えられた。家の前に郵便配達の赤いバンが止まっている。道は唐突に離陸しはじめた。だが、斜面にそって九十九折に上がっていくので、思っていたほど急ではない。3回、折り返したあと、さらに上に行く道と、等高線上に進む道に分かれたが、躊躇なく上に進んだ。このあたりから、ずっと向こうの山の斜面に「峰」が見えるようになる。奥のいくつかの民家は、主のいない廃屋のようだ。自家用車が停められている家も何軒かあるが、人の気配はあまり感じられない。淡々と上がって、振り返ると、山の急斜面に人家と畑がへばりついているのがわかる。最後のカーブを曲がり、鷹ノ巣山の登山口を見て進んだ先、一番上の家の上で舗装がつきた。せっかくだからと、さらに地道の林道をたどったが、そこから1キロほどで行き止まりであった。引き返し、見晴らしのよい場所に停まって、魚肉ソーセージをおかずに、おにぎりふたつ平らげる。山上集落に吹く五月の風がさわやかだ。どこかから、絶えずコノハズクのホッホッホッとの低い声が聞こえてくる。山の上の暮らしはロマンチックだが、たまに訪れるからそのように感じるだけで、実際に暮らしている方は苦労が多いことだろう。人心地つけたあと、元来た道を下って行った。

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 「下り」に戻ってから、次に「峰」に向かう。坂は、奥よりもこちらの方がずっと急だ。コンクリート地の路面に、滑り止めの溝が一定間隔でつけられている。そのうえを、マッドガードをカタカタいわせながら、立ちこぎを交えつつ上がって行った。何度からカーブを曲がるうち、集落のなかを通るようになった。さっき訪れた「奥」集落が遠くの山の斜面に見える。ある古民家から、大音響で百恵ちゃんの懐メロが流れてきた。こんな山奥に似つかわしくないなあ、と思うのもまたたまに訪れる者の勝手な感想であり、住む方にとってはそうやって景気をつけないとやってられないということか、それとも山奥だから誰に気をつかうことなくレコードの音を大きくして構わないということか。懐かしのメロディーに送られながら、なお上を目指す。道はさらに急さを増し、もう7割方スタンディングでの登坂だ。そうやって得意のジグザグ上りを繰り返しつつ、もういい加減上だろうとの期待は裏切られ、目の先ずっと上のほうにこれから進むべき道がついているのが見える。だが見た目ほどの距離はないことは、これまでの経験でわかる。時間は十分あり焦る必要はない。じっと我慢のヒルクライムを継続して、ほどなく、とうとう一番上の民家の上に到着した。林道はその先へと続いているが、ここはゲートで厳重に閉ざされていた。

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 その民家に通じる道の途中にある、看板に従って階段を上ってみた。そこには、立派な栂の木の下に、小さなかわいらしい「山の神」様の祠が祭られていたので、ヘルメットを脱いで手を合わせて疫病退散のことなどをお願いする。

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 そうして、「下り」に向けて山を下りていったが、路面に切ってある溝による振動で、後ろの分割泥除けの勘合部ががたがたと派手な音を立てる。その音を聞いて、不審に思われたのか、途中の民家の農家の奥さんが心配そうにこちらを見ている、申し訳ないが、どうしようもない。長い坂を下りて、泥除けのステーの蝶ネジが緩んでいないかどうか確認してから、元来た峰谷橋に戻った。

 奥多摩湖北岸の道を伝って、深山橋を渡ったところの自販機で休憩。冷たいお茶を求めて、残りおにぎりひとついただく。そのあと、いつものように、大味な風張峠に進まず小菅に向かう。白沢へは、一度急な坂をつめなければならず、距離は短いが毎度骨が折れる。しかし焦らずにカーブを詰めて乗越え、多摩源流大学の横を通って、今日は止まらずに鶴峠に向かった。30分くらいで上がりたい。

 はじめ急な坂があり、そのあと少し緩んで、次に一直線のさらなる急坂がずっと上までついている。そこは慌てず焦らず、淡々と30T×26Tで漕ぎ続けると、遅いようでも15分ほどでその上に到着。そこから何度か左右に曲がりつつ高度を上がる。最後、峠直下の急登は、スタンディングで距離を稼いで、見込みどおり15時12分到着。ここのピカチュウをバッグに、もう何度目かの記念写真を撮って、携帯をチェックしてから下りについた。

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 長作を過ぎたところの四阿で止まって、上司からのメールに返信。平日に休みをとるのはよいが、見なければよいものを、一度見てしまったからには、休日といえども返事をしないと安心できないのは、宮遣えの身であるがゆえのこと。情けないと思わないで欲しい。そうして、再び下りについたが、牛飼より先、東の山の斜面の広葉樹をことごとく伐採しているのはいったい何事であるか。屍の幹たち。いままさに切り出した大木を大型トラックに荷台に乗せるところであった。

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 いつも印象的な飯尾集落の全体を見渡したあと、さらに下って、郷原を過ぎる。上り返しが嫌なため、田和峠に向かわず、腰掛線に入る。途中の炭焼き小屋のところで自転車の写真を撮るのも、これもいつものとおり。下って、幹線に合流したあと、棡原のいくつかの集落を抜けて五差路に。鶴川左岸の細道をたどって、少しアップしてから、ずっと流して山風呂。要害山を見つつ、その先のパン屋さん兼用のデイリーストアで、コロッケパンとコーヒーをいただいてから、国道に合流して帰路についた。中途半端なアップダウンが嫌なので、今日も大垂水を超えて高尾から町田街道を進んで、いつもの山田うどん到着19時05分。コロナウイルス対策の営業終了時間1時間前に帰着することができた。

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 通いなれたコースであるが、今日の峰谷のように初めて訪れる場所を入れると、走り終えたあとの印象も違った感じになるようだ。


Commented by INTER8 at 2020-05-16 18:33
こんばんは。
東京には色んな顔がありますね (^^;
峰の集落も奥の集落も行ってみたいんですがピストンになってしまうのがネックになっています。
サイクリング中に一番嫌なのがクラクションです。鳴らす人はどうしたいんでしょうね。鳴らされたからって自転車が止まるとでも思っているのでしょうか。
Commented by paparouh at 2020-05-17 07:07
> INTER8さん
おはようございます。奥も峰も、わたしもかねて行ってみたいところでしたが、おっしゃるように行き止まりなので、躊躇していました。しかし、いまは輪行をしないことにしていることから、自宅発で行ったところのない場所を考えて出かけてまいりました。高いところは気持ちがよいですね。とてもよいところでしたよ。五月の風が涼しかったです。
クラクションには頭にきます。何を考えて鳴らすのでしょうか。自動車を通るのに自転車が邪魔だといいたいのでしょうか。お前のほうがよっぽど危険だといいたいです。
Commented by ぶとぼそ at 2020-05-18 15:46
奥という地名は、沖縄本島の南岸にもあり、旅人の間でも知名度の高い場所です。
対して奥多摩に奥という集落があるのは知りませんでした。
今でも5世帯で人の暮らしがあるとは驚きです。集落が維持出来るのも今後数年かもしれませんね。

山の斜面にへばりつくように建てられた家屋。先人たちは苦労して集落を形成したはず。
現代でも都心近郊、しかも都内にこのような場所があるのは凄い事ですよね。
Commented by paparouh at 2020-05-18 18:54
> ぶとぼそさん
こんばんは。沖縄にも奥というところがあるのですか。存じませんでした。もう、随分長く沖縄に行っていません。若いころ2度ほど訪れたでしょうか。生きているうちに、あと何度か訪れてみたいです。早く疫病が収束することを願っています。元にした本の記事は2014年当時のことですので、もしかするとさらに世帯は減っているのかもしれません。都会に住んで勝手をいうて申し訳ないのですが、桃源郷の趣のあるこのような農村集落が永く続くといいのですが、若い人が継がない限り限界はあるようですね。ちょっと残念です。こういう集落を訪ね歩くのもわたしたち世代が最後かもしれませんね。精々いろいろな場所を見てみたいと思っています。
Commented by b. at 2020-05-18 21:54
奥と峰、両方に上られた帰路に、小菅から長い長い鶴峠を上ってしまわれたなんて、ただただ、ビックリです。
峰への坂一つとっても、私には崖をはい上がる様に感じました。スタンディングどころか、情けない話ですが、バス停から先、ほとんど押しました・・・
都内で人が住む最も高い場所とのことですが、どちらの集落からもお互いが見えて、不思議な感じがしました。山の神さまの祠は本当にかわいらしいですね。思わず振り返ってしまう棡原、山の緑が眩しいです。
Commented by paparouh at 2020-05-19 18:51
> b.さん
こんばんは。奥多摩から、鶴峠を経て、上野原から自宅に戻るコースは、自分のなかでは定番となってしまっています。ですので、変化がほしいなあと思っていて、今回のコースを思いつきました。おっしゃるように、峰への坂はきつかったですね。わたしも、写真撮影を理由にところどころ足をつけて、なんとか上がることができました。今回訪れた山上集落の夜や朝は、どんな感じなのでしょうか。夜はしんとした暗闇と星空、朝は小鳥たちの声で明けるのでしょうね。でも実際に暮らしている方はたいへんでしょうね。都会に住んでいるものの勝手ないいぶんになってしまいますが、山神さまとともに、山上集落が永く続いてほしいものです。
by paparouh | 2020-05-16 06:53 | 東京地方 | Comments(6)

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