1.コース
(1日目)
新白河-磐城石川-須賀川-田村-船引温泉 79.6キロ
ルート
https://ridewithgps.com/routes/30483966
(2日目)
船引温泉-小野-平田-古殿-鮫川-矢祭-大子-袋田 128.6キロ
ルート
https://ridewithgps.com/routes/30483967
2.実施日
2016年1月16日(土)曇のち晴れ~17日(日)晴れ
3.実施者
単独
4.企画
FCYCLE
http://mixi.jp/view_event.pl?comm_id=6145474&id=79131601&comment_count=22
5.日記
FCYCLE主催の泊まりがけ阿武隈ツアーに参加しました。いつも主催してくださるT地さん、合宿で楽しいときをすごさせていただいたみなさま、どうもありがとうございました。

信州辺りだと、自転車で走っていて人の住んでいるところと山のエリアとが区別できるが、阿武隈は比較的低山である分、ふたつが混然一体となっているところが特徴なのではないかと思った。それゆえ、顕著な峠や山岳道路がない代わりに、集落と集落をつなぐ適度なアップダウンがずっと続くところが広い阿武隈らしく、カーブを曲がって現れる次の村やぽつんぽつんある民家の佇まいが素朴で「こんな山奥の暮らしぶりはどんなのだろう」と想いを巡らせながら走るのが結構楽しい。そんななかたまに外遊びする子たちの声がすると、ちょっと嬉しくなりこのような日本の里山風景が永く引き継がれるといいなあと思う。また人の気配が少ない分、用心のため番犬を飼っているところが多く、今回もよく吠えられた。阿武隈は、一部(常磐ハワイアンセンターなど)を除き有名な観光スポットも絶景もグルメもないが、静かな田舎の山村を楽しみたい向きにはとてもよいところではないかと思った。
1日目。交通費を節約したくて、大宮から新幹線に乗った。早朝の山の手線と埼京線は徹夜明け仕事帰りのサラリーマンやひと晩遊んだ若者で混雑して座れず。各駅停車のやまびこ号車内で朝弁当を食うと、親知らずと下の歯の間に詰まった食べかすがなかなか取れず少しいらいらした。新白河のホームに下車すると都会とは違うひんやりした冷気を感じる。芭蕉さんの銅像の前の広場で自転車を組み立てていると、タバコの煙が漂ってきたので嫌な顔で見ると怪訝そうに見返してくる。あとで見るとそこは灰皿の置かれた喫煙場であったようだ。8時45分スタート。途中コンビニエンスで、行動食のおにぎりを買う。この系列は店員が語尾を矢鱈長く伸ばして応対するところが多い気がする(「ます」といえばいいのに、「ま~す」などという)が、そのように教育しているのだろうか。白河の街並みを過ぎる。ところどころ酒蔵や倉などあり歴史の古さを感じさせる。白河ラーメンのお店もある(こんどきたときはぜひ食べてみよう)。やがて周囲は冬の田んぼ地帯となり遮るものがなくて風を受けまだ体が温まらないうちは手の指先の冷たさを感じる。御斉所街道を進んで石川町に入ると防災無線が火の用心を呼び掛けていた。看板に「猫啼温泉」とあり面白い名前だなと思ううち鉄道の汽笛が聞こえ磐城石川駅に到着したのでひと休みした。

母畑温泉の分岐を過ぎたところにある廃業した旅館が荒廃している。その先少し坂をあがって渓流沿いが続くと思ったがダムが建設中であった。その横を上がり、福島空港へ行く有料道路を交差して北へ進む。古い商店がある。貯木場がある。奥の高台にぽつんと一軒民家が建っていて軒先で大根を乾しているようだ。しばらく進むとまた集落に出た。ここも家がある割にはあんまり人気がないなと思うと、背後でモーっと啼く声がして見ると畜舎あり黒い和牛が親牛も仔牛も揃ってこちらを見ている。その先、少し上がって須賀川市に入ると、ところどころうっすら積もっていたのでスリップしないように進む。やがて遠くの景色が開けると、行く手の先の方になだらかな山並みが美しく目に映じた。そこから先、田舎の小学校や雪のついた田んぼや民家の様子を見ながら淡々と自転車を進めたが、冬らしく薄曇りになりときどきちらちら粉雪が落ちてきた。通行人はおらず、ときどきお百姓さんの軽が通過するくらいで、寒く寂しい感じだ。だいぶ走ったので橋の袂に自転車を停め、隅っこで立小便してからおにぎりを食べた。




田村市に入る。柳橋というところに歌舞伎場があった。だんだん人家も多くなってくる。天気も晴れ青空も見えて少しほっとした。だいぶ下ってから、横道に逸れるところ「朴橋(ほおのきばし)のお人形様」の看板あり自転車を停めて丘の階段を上がって珍しいお姿の写真を撮らせていただく。魔除けかの習俗らしく、村の人たちが共同でメンテナンスされている旨、案内にある。さてそこからしばらく進んでいくと、上の方に行く坂道に突き当たったので、上がる前、仕出屋さん工場の前に停めて休憩、昼過ぎでお腹も減ったし、距離ももう少しなので残りおにぎりふたつ食べさらに携行したチョコもぜんぶ食べた。磐越自動車道・磐越東線をクロスし、船引の町に入る。町中を散策しようかなとも思ったが、冷えた体を早く温めたくてさっさと宿に向かう。14時30分過ぎ、奥に入ったところにある宿舎に入ると、先に着かれた幹事のT地さんが窓から「おーい」と声をかけて下さった。玄関でご挨拶をして浴衣に着替えて風呂場に行く。オプションの死海温泉に入るとぷかぷか浮かぶのは良いが、傷跡がひりひりした。部屋に戻ると、片仮名Tさんが到着されていた。ほどなく、Iさん、Kさんが随所から到着された。めいめい飲料を買っていろいろおしゃべりしながら寛いだ。こんな早い時間から飲酒すると寝てしまいそうなので、しばらく自重したが、晩飯も近くなったので立て続けに4本か5本ほどハイボールレギュラー缶を飲む。夕食後も歓談したようだが後半はあまり覚えていなくて酔うての不規則発言とか布団敷きとかみなさんに迷惑をかけたのではないかと少し心配である。
2日目。6時過ぎに朝風呂を使う。あがってロビーにいらっしゃったTさんと、ストーブにあたりながらカメラのことなど会話する。朝食まで、今日のコースなど報告しあいながら時間をつぶした。食事の後、精算してから、9時前めいめいさようならをいって出発した。ツーリングマップルに、「349をフォローすれば阿武隈の世界がみえてくる」と書いてあったので、今日はこの国道をメインに進む計画だ。始めは、磐越線沿いを進んだ。コンビニに寄って行動食を買っていると、同宿の若いIさんが挨拶をくれながら通り過ぎていった。途中にある昔風な造りの「大越娯楽場」の写真を撮る。あぶくま洞の方の山を見ると、上のほうが武甲山のように削られていた。神俣で鉄道沿いに別れを告げ、少し上り下りしてから国道に入るもここは大味な道で面白味がないが、やがて高速沿いを離れるといつもの田舎道に入った。湯殿山の碑がある鎮守の森があり、交差点にあった昭和チックなドライブインに魅かれたが、朝早いためか時代遅れで潰れてしまった所為か、開いていない。平田村に入り、少し開けた気持ちのよい場所があったので休憩して早速おにぎりを食べる。今日は、袋田の滝を見学してから輪行するつもりだが、精々1時間に1本の水郡線、17時代だと自宅着が23時過ぎるので、できれば16時40分過ぎに乗車したい。




さて、進んで、古殿町に入るピークを過ぎるといったんどんどん下りとなった。このあたり、合掌造りが目立つようになったがスレート葺きなのが少し残念ではある。下って、古殿の街中を過ぎる。酒蔵などあり、街並みの様子から古い町であることが想像された。抜けて、鮫川の村境を通りすぎると再び朴訥な阿武隈の道らしくなった。ここからしばらく上がりが続いたが、一部急な箇所があるも全般的に緩くもなくきつくもなく自転車であがるのに丁度良い勾配加減、国道とは名ばかりの車の来ない一車線、行く手次々現れる民家の佇まいや横に植えている冬枯れの立ち木の様、冬の田畑、温泉マーク付の宿舎、田舎風のガソリンスタンドなど見ながら楽しくヒルクライムした。ときどき、たまに城のような立派で広い造りの家もあるがこんな田舎にどんな大尽が住んでいらっしゃるのだろう。そうこうするうち塙町の境界を過ぎる。ここからどんどん下りはじめ、南の方の遠くの景色が見えるビュースポットがあったが、快適なダウンヒルを楽しみたくて停まらず、ブレーキをできるだけ使わずにずんずん下った。ピークを過ぎたところはそれまでと違った植生で、気候が変わったことを感じさせたがしばらく下ったところにある山里集落の佇まいは変わらずに心休まる雰囲気だ。しかしそこにも停まらないで漕ぎ進むうち、これまでより都会の矢祭(東館駅)に到着して、楽しかった阿武隈農村巡りサイクリングはいったん終了した。










さてこの時点で15時過ぎくらい、意外と早かったのでのんびりしてもよいが俄然元気が出て交通量の多くなった国道118号をトップギヤ35キロ位で進んだ。予定していた月居隧道へは進まず、大子を通過、左折して袋田の滝に至る。袂のお土産屋さんの招きに従って自転車を停め、拝観料300円を払ってトンネルを潜って拝見すると、さすがにお金を払ってみるだけの値打あり、幅広に何段か幾筋も水が流れる立派な滝であった(凍結は、水の流れの弱い筋だけ凍っていた)。古今著名な人達の和歌も読んでから戻って、駅の交差点にある田舎風のコンビニエンスで酒と弁当を買ってから、袋田駅発16時48分で帰宅の途についたのであった。袋田駅は無人駅、乗車後車掌さんに水戸から北千住までの特急を頼むと、この時間連絡する特急は北千住に止まらず鈍行利用でも時間が変わらないと教えていただいたのでそれで帰宅した(帰宅時間22時10分)。宿でTさんに教えていただいたように、ダイヤ変更で北千住着の特急も間引かれているようだが、不便なので復活を望みたいところだ。

阿武隈はとても良い道だ。交通が割かし不便で、また家からだいぶ遠いので電車代がばかにならないが、日程と金銭をうまく工面してちょくちょく訪れたいところだ。